皆さま、こんにちは。
今日はミール風ブックトーク「読んでミール?」の第9弾をお届けします。
テーマは「冬」。本当は雪の舞う時期にお届けしたかったのですが、三寒四温の時期になりました。せめて、本格的な春になる前に!とお贈りします。
今回もブックトーカーふたりのこころの本棚から3冊ずつ、ご紹介します。
第9弾「読んでミール?」の始まり、はじまり。
Book Talker Naomi***
① 角幡唯介 著
「極夜行」(2018)文藝春秋
「極夜」とは「日中でも薄明か太陽が沈んだ状態が続く現象のことをいい、厳密には太陽の光が当たる限界緯度である66.6度を超える南極圏や北極圏で起こる現象(対義語は白夜)」です。
著者である探検家の角幡唯介は「極夜の世界に行けば真の闇を経験し本物の太陽を見られるのではないか」との思いで、氷点下30度台のグリーンランド北西部へのひとり旅に出ます。それは氷河を渡り氷床やツンドラ地帯を進む過酷な旅で、生死を分ける危険が常につきまとう探検です。
でもこの旅には力強い相棒がいました。40㎏近い大きな犬、ウヤミリックです。白熊対策や橇(そり)を引いてもらう力になるだけではなく、何よりも精神的な支えになり、太陽の出ない闇の中にずっといると鬱状態になる「極夜病」から救ってもくれました。
氷河が割れそうになったりブリザードにあったりと色々な危険に遭いましたが、最大のヤマ場は前もって準備していた2か所の食料等のデポ(保管場所)の1つが白熊に荒らされるというアクシデントがあった時でした。それが有ればあと2か月は休養をとりながら太陽が出る瞬間を見る事が出来るはずでした。
そこで彼はとりあえず獲物を捕まえて食料確保をしながら、何とかそこに残る努力をしてみようという選択をします。
食料が少なくなっていく中でどんどん痩せていく相棒のウヤミリック。その姿を見て自分の残り少ない食料を分け与えようかと思い、ウヤミリックが死んだらその肉を食べ自分はあと何日生きながらえる事が出来るかを考える。そんな極限状態の中で待っていたものは……。
やはり作り物ではなく実体験したものは胸に迫ってきます。私は何度も泣いてしまいました。
皆さんもこの本を読む事で究極の冬を体験してみませんか?
② 三浦綾子 著
「氷点」(1965)朝日新聞社、角川文庫
これは院長夫人が若い医師との逢い引きの最中に3歳の娘を通り魔に殺され、そんな妻への復讐の為に、その殺人犯の娘を養女にするという襲撃的な始まりをする余りにも有名な小説です。
丁度この本を読んだ思春期の頃、著者の三浦綾子さんと同じ北海道の旭川市に住んでいて、この養女、美しく頭も良く純粋な陽子に憧れを抱いていました。
でも半世紀を経て今の年齢になると、陽子という娘は真っ直ぐ過ぎて生きづらいだろうなと思うようになりました。
「氷点」では、実際にそういうラストを迎えますが、続編の「続氷点」で、本当の殺人犯の娘との関わりの中で成長し、陽子の心に出来た氷点は少しずつ溶けてきたのではないかと思います。
それにしても犯罪者の家族というだけで肩身の狭い思いをするのはいつの時代も同じですね。今は更にコロナに感染しただけでバッシングをうけたりもします。心の氷点が消えるような世の中になってほしいですね。
[参考]「続氷点」(1971)角川文庫
③ 小泉八雲 著
「雪女」(1904)偕成社、講談社、恒文社 他
日本人なら誰もが知っているこの物語はギリシャ生まれのイギリス人(後に日本に帰化)パトリック・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が「怪談」にまとめたものです。
この作品は、私が十数年続けている朗読の発表会で2年前に扱ったもので、その時に雪女(及び雪)を私自身が演じて感じたのは、氷の様に冷たいはずの雪女は、実はとても熱い心を持っているということです。
巳之吉を好きになり、雪女の世界のタブーをおかして人間と結婚し子供を10人も作る。しかし巳之吉がうっかり雪女の事を話してしまい人間界に居られなくなった時も巳之吉を殺さず子供達を託して去っていく。
表面上は冷たく怖いイメージですが、実は愛情深く燃える様な熱い心を持っているのではないかと思います。
よく知られたお話も別の角度から読んでみるとまた違う世界が見えるのではないでしょうか?
Book Talker Chie***
1 E・ポター著 村岡花子訳
『スウ姉さん』(2014)河出文庫
現代の私たちの暮らしと比べれば、ツッコミどころも満載ながら、自分のこと以上に誰か身近な人のために動き、働き、つねに頼られる主人公のスウ姉さんに、まわりの人物を重ねたり、自身がそうではないかと思ったり。スウ姉さんはどの時代にも、どこの国にも、どんな家族にも居る存在ではないかと、そんなことを思わせてくれる本です。
著者のポターの代表作といえば『少女ポリアンナ』(パレアナとも言われる)で、どんなに大変なことでも「喜びのゲーム」に置き換えて幸せを抱きしめるポジティブシンキングな少女のお話。ポリアンナも村岡花子が昭和初期に訳し日本に紹介したことで知られますが、同じ女性を主人公にしながらも『スウ姉さん』※(昭和7年訳出のタイトルは『姉は闘ふ』)の世界観は、人と人の交差をもっと掘り下げているように感じます。村岡花子はポリアンナ以上にスウ姉さんを紹介したかったのではないかと、世に存在する多くのスウ姉さんたちに光を当てたかったのではないかと思います。
さて、主人公のスウ姉さんはどんな人物なのでしょう。彼女はボストンに住んでいて、時代はおそらく20世紀前半。豊かな暮らしの中にいて、母亡き後、父や妹、弟に頼られっぱなし。恋人も財産家の彼女との結婚を早く早くと急ぐ。でもスウ姉さんには本当は熱望していることがありました。それは才能があるといわれたピアノで多くの人に拍手喝采を浴びるような音楽家になり、家族にとって誇らしいと思えるような存在になること。でも、彼女が羽ばたくことを家族が許しません。家族のことを一番に考えるべき存在や立場としてスウ姉さんを閉じ込めるからです。そのうえ、父の銀行が破綻し一家は財産を失い、父は精神的に幼児になってしまう。妹も弟もそんな父の姿を否定して、介護はすべてスウ姉さんに。しかも、恋人との関係も不鮮明になり、彼女はこれまでしたことのない家事に奮闘し、弟や妹のため一家の稼ぎ手となってピアノを教えるという日々に突入していくのです。
こうしてストーリーをたどってみると案外よくある物語なのかもしれません。でも、家族のためにじゃがいもの皮を剥き続ける、いくら剥いても剥いてもじゃがいもの皮が減らない、といった例えが示すように、普遍的な葛藤が描かれていて、深みがあり、物語の世界に引きつけられます。
苦しむスウ姉さんが何かを乗り越える時に現れるのが、何度も訪れる「冬」という季節のような気がして、この本を挙げました。何度も訪れる冬のあとには何度も春が来て・・・。その息吹が人の気持ちを明るくし思い直し、生き直していく力となるのかもしれません。スウ姉さんは耐えながら弾力を増しながら日々を生きる。そういう物語として大事にしていくのも素敵です!
2 M.B.ゴフスタイン著 末盛千枝子訳
『ピアノ調律師』(2012)現代企画室/復刻版
ピアノつながりで、私の最も好きな絵本をご紹介します。絵本といっても文字が多く、大人の読み物として本棚に置いておきたくなる本。
主人公は両親を亡くしておじいちゃんに引き取られた小さな女の子デビー。おじいちゃんの職業であるピアノ調律師の仕事に並々ならぬ興味を持ち、こころの多くをピアノ調律の作業や道具に奪われています。でもおじいちゃんは孫にはピアノ調律師よりもピアニストになってほしいと願っています。
そういうふたりがあるとき、雪道用のオーバーシューズを履いてコートを着込み、有名なピアニストのコンサート前の調律に向かいます。調律を始めてしばらくすると、おじいちゃんが孫にちょっとお使いを頼みます。そこから始まるお話がとても素敵です。まわりの大人は巻き込まれながらも、大人ならではのやさしさもそっと発揮していきます。この本を手にすると、ココアやシチュウなど湯気のあがるものを思い浮かべるのは物語の季節が冬だから?だけど、心身がほっと温まるだけではない、どこか、大切なものを大切にしつづけることの大切さを訴えるという、強さや厳かさを私は感じるのです。内なる熱と外の冷たさ。冬という季節がこの対比を描き出し、届けたいメッセージを支えているのではないかと想像しています。
3 M.B.ゴフスタイン著 谷川俊太郎訳
『ふたりの雪だるま』(1992)すえもりブックス
ゴフスタインが好きになり、彼女の作品はいくつか私にとって大切な本になりましたが、そのなかのもう一冊を冬にちなんでご紹介します。
この雪だるまの絵本は、絵が中心。言葉はとても少ないのですが、描かれた絵の中からたくさんのこころの動きが伝わってくるようです。ストーリーも素敵ですが、絵のタッチも素朴で暖かく、雪が降ったり積もったりする様子が目に見えるよう。
主人公はお姉ちゃんと弟。ふたりにとって初めての大雪が降った朝、ふたりで庭に出て雪だるまを2つ作ります。作ったのですが、どうやら、お姉ちゃんにとっては作った瞬間から雪だるまは作り物ではなくて、自分たちと同じ生きているもののように感じたのではないでしょうか。
やがて夕暮れ。家族で食事を囲んでいると、ふとお姉ちゃんは思うのです。雪だるま、どうしているかなあと。そういう誰もが経験したような気持ちの揺れや動きを、父や母が受け止めて小さな物語がつづきます。幼い弟くんの喜びもいい味わい。こんな愛しい日々に、子も親も、雪だるまも幸せを感じていてほしいと思います。
写真は近所の梅林公園で散歩した時のもの。やがて小さな春が見えてくるはず・・・
(スタッフN&C)
皆さま、おはようございます。昨日から寒さが戻り、空は晴れやかながらも風が冷たい!岐阜です。いかがお過ごしでしょうか。
さて、昨夏より守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)の南壁、西壁でアートウォールを展開していることを中心に、ブログでお伝えしていますが、昨年末よりミールの南壁を含む、岐阜問屋町二丁目商店街の南壁(通称:レトロ壁)の全長130メートルにおよぶ巨壁をアートウォールにという岐阜問屋町二丁目協同組合の事業がスタートしました。足場を組み、長年の風雨で劣化した場所の補修をして下地を施し、現在は岐阜県美術館前館長の古川秀昭先生のアート監修と工事事業者の熱意あるお仕事により巨壁へのペインティングが進んでいます。足場は今月中にとれる予定で、全容がお目見えするも間近になりました。
そんな日々、ミールの守富寛所長もメディアの皆さんから取材を受けております!内容はぜひ新聞記事をご一読くださいませ。朝日新聞(2月4日)と岐阜新聞(2月21日)の記事については、すでにミール公式ツイッターにて共有させていただいております。
ミール公式ツイッターhttps://twitter.com/OfficialMeel/
また近日中にテレビでも放送される予定ですので、日時がわかりましたらこのブログでもお伝えいたします。
ミールの壁でのチャレンジがこのような町づくりにもつながっていき、うれしく思っています。岐阜問屋町で仕事をする一員としても、これからの展開をずっと応援していきたいと思います。
またミールの関連リンクに「岐阜問屋町二丁目協同組合」ウェブサイトをアップいたしました。岐阜問屋町+レトロ壁の検索ワードでもご覧いただけます。(レトロ壁は守富所長のネーミングです!)あわせてどうぞよろしくお願いいたします。
◎ミールの南壁、西壁の取り組みについてのブログはこちら
https://moritomimeel.jp/守富所長と/
https://moritomimeel.jp/ミール南壁アートウォール/
◎岐阜問屋町二丁目協同組合ホームページ
https://moritomimeel.jp/tonyamachi2/
写真は取材時。左が朝日新聞、右が読売新聞の記者さんの撮影の様子です!
(スタッフC)
皆さま、こんにちは。守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)の西壁を活用したアートウォール。その制作に取り組んでくださった3人のアーティストへのインタビュー、引き続き[後編]をお届けします。
◎法晃さんのお話を聞いて、アートウォールを通じて何かに気づいたり、人とつながったりしたらいいなと思いました。昨年皆さんが取り組まれた豊田市の保見団地での保見アートプロジェクト※1でもきっといろんな経験をされたことと思います。
法晃さん/保見団地のアートプロジェクトのときは半年くらい会議をしても何も決まらなかったので、話し合っているだけでなく、とにかく行動することでわかってくることがあるんじゃないかと気づきました。いかにして住民を巻き込むか、ですね。残念なこととしては保見団地ではせっかくのアートに上書きされてしまい、それをやった人が逮捕されるということも起きました。そのことは住民が通報した、ということでもあるんだろうなと想像するんですが、通報したということは、「残しておきたい絵」だったということなのかなぁとも思えるんです。それまでは落書きし放題の無法地帯といってもいい環境だったので。とはいえ、逮捕者が出てしまったというのは悲しい面もありますね。
壁と絵ということを考えると、そもそも落書きって何?という「問」が常にあります。その答えはとても難しい。動物のマーキングみたいなものかなとも思うんですけど(笑)。いずれにしても消す、残すという選択のときに、「残そうよ!」という絵だったらいいなと思いますけどね。
※1 外国籍の住民が半数以上を占める保見団地(愛知県豊田市)での取り組みで、アートを通じたワークショップを重ね、住民同士のコミュニケーションを図りながら活動。法晃さんがアートプロジェクトのプロデュースを担い、真允子さん、ヒロさんもアーティストとして参加。2020年3月29日、団地25棟1階の通称「憩いの場」の空間は、かつての落書きも一部生かしながら、画家やイラストレータによる鮮やかな絵に包まれて生まれ変わった。
(下の写真はアートプロジェクトをまとめた冊子より、法晃さん、真允子さん、ヒロさんのページ)
◎ますます深いお話です。真允子さんがアートウォールのような活動とつながったのはどういった経緯ですか?
真允子さん/私はもともと油絵をやっていて、家にこもってキャンバスに向かうというのが基本でしたし、今もそうです。でもしばらくの間、絵をやめていた時期があって、再開したときに東日本大震災が起きたことが大きな転機になりました。
どんな人もそうだったと思うんですけど、やりたいことが一瞬で無くなる、一瞬にして日本が暗くなるということを経験して・・・。それで日本を明るくするためには自分に何ができるか?と考えました。当時は子育ての最中だったし、ボランティアに行く時間もない。でも暗い日本が明るくなり元気になり復興にたどりつこうとしている時に、現地で関わることができなくても、私も地元で何かできないか?アートの力を注げないかなと思ったんですよ。うまく言えませんが、地域貢献として。
そんな頃に、それまで家でキャンバスに向かっていた私が、法晃さんとヒロさんに出会って、まちのなかでライブペイントをするという、屋外で絵を描くというアートを知りました。外で絵を描いていると、不思議に人が見に来てくれて、自然にまちに賑わいが生まれるということを実感したんです。その体験を通じて、絵は何に描いても地域貢献につながるんじゃないかなと思いました。家でキャンバスに向かっているのも、壁画でも、アートをするということとしては違和感がなかったというのが、今の自分につながっていると思います。
◎外へ出て、人に見てもらいながら絵を描くという新鮮な体験が、アートができる可能性を感じる出来事だったんですね。ヒロさんは以前のインタビューで「アートウォールはパブリックアートという責任がある」と話してくださったのが印象的でした。
ヒロさん/はい、そうですね。いつもそう思って取り組んでいます。もともと僕はグラフィティが好き、壁画を描きたい。もっと言えば、表現したい、絵を描くのが好きというシンプルな思いから来ているんです。壁画はいろんな人に見てもらえる。自分がいる証しというんでしょうか、存在が残せる。作品が風景のなかに残る、馴染むことができる。でも、その一方で、生み出したものが違和感となる場合もあるということを忘れずにいたいんです。
法晃さん/そうなんだ。僕はパブリックアートという意識はなかったなぁ(笑)。誰が描いてもいいけれども、たまたま自分が描いたということと思っています。もともと絵を描くことの好きな人は、自分でもいろんな場所、いろんな機会に絵を描きたいと思いがあると思う。だから今回のミールの南壁や西壁を見た人が「どうしたら描けますか?」「私も描けるんでしょうか?」と、ミールや商店街の人たちとコミュニケーションするというのが大事だと思うんです。
何て言ったらいいのかな・・・ここに描いている人たちがすごいんじゃない、ということ。アートウォールを見た人が「オレならこういうふうに描きたいな」と思ったら、すでに描いてある絵への上書きではなくて、そこに描くスペースがあればそこへ行ってお願いしてみたらいい。「街の人」と「描きたい!と言っている人」がつながっていくといいなぁというのが僕の願い。前にも話しましたが、落書きという言葉は本当に難しい。何をもって落書きというか。自分たち作家もある程度自由を与えられて描いているということでは、落書きなんじゃないかなと思うことがあります(笑)。
◎しかも落書きは良いもの?良くないもの?どういうもの?と考えるとますます難しいテーマですね。
法晃さん/問屋町のような規模のコミュニティだったら、人のつながりが基本だと思うんです。東京やそのほかの大きな都会とは違う。描きたい人が飛び込めるよう、街の人も心を開いて受け入れてくれるような、そんな人のつながりを大切にしていけたらいいですよね。
◎「人とのつながり」はミールのテーマの一つでもあります。現在、このミールの南壁を含む全長130メートルの巨壁をアートウォールにする取り組みが国からの補助金も支えにして進行中ですが、このアクションも含めて、「まち」と「アート」、「アートウォールのあるまち」について、代表してヒロさん、お願いいたします。
ヒロさん/アートがあることでまちが明るくなることはいいな、と思うんです。僕はもっと描きたいですね。今回、リアルタッチの真允子さん、コンセプチャルな縄をモチーフにした法晃さん。そして僕、と。絶対に楽しいことがあるなーと思って取り組みましたから。これをきっかけにいろんな人の作品が増えていくといいなぁと思っています。
いろんな人の絵があるから面白い。自分一人で描いていても楽しくない。もちろん、観る人にとっても変化があるといいなと思います。ただ・・・。
◎ただ?
ヒロさん/僕個人の考えとしては、自分もプロとして生きているので、どんなプロジェクトでも場所でもそうですが「このスペースに描かせてあげるから、描いてね!」という視点や発想を超えて仕事ができたらといつも願っています。もちろんケースバイケースですが、仕事料金が少なくても、たとえば多くの人が描く現場を見てくれるということなら受けたいと思います。
◎それはとても大切なお話ですね。「アート」と「まち」と「人」が楽しく明るくつながるために、ミールも大事に考えていきたいと思います。今回、西壁にも「人とのつながりを大切にしよう」というメッセージを小さく入れてくださいましたね!それに加えて絵だけでなく、文字もアートになっているのも楽しい仕掛けです!
ヒロさん/じつは壁面に設置してあるボックス部分、そこを最初は避けていたんです。みんなで背景をつけたあと、「さて、ここどうする?」ということになって。
真允子さん/最初は、鳥かごや水槽という、モチーフやボックスの形にちなんだアイデアが出たんだっけ・・・。
法晃さん/でもボックスの扉どうしの境目の黒が強調されてしまうのと、まわりが淡いグラデーションだったので、ここはパキッとした感じにしたらということになって。僕はもともと文字をつかった作品もつくっていたので、このボックスの凸部分を利用して文字をデザインすることにしたんです。
◎なるほど、そこに浮かび上がるのがミールを表す文字ですね。ぜひ実際に見て楽しんで欲しいです!(笑)
今日は楽しくて深くて、やっぱり楽しいお話をたくさんしてくださって、本当にありがとうございました!
*今回のミール西壁のアートウォールの様子をヒロさんが動画にされました。
ぜひご覧ください!
https://www.youtube.com/watch?v=OpFYQU7wovM
*アーティストのプロフィール、アート活動などは下記ウェブサイトをご参照ください。
中島法晃さん(岐阜県本巣市出身、美術家)
新井真允子さん(岐阜県羽島市出身、画家)
https://www.instagram.com/mamimami_artwork_0303/
Madblast Hiroさん(岐阜県各務原出身、画家)
(スタッフC)
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。立春も過ぎ、あとは暖かくなる季節を待つばかりですね。
さて、昨年夏の守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)南壁へのアートウォールに続き、昨年末に、通路に面するミール西壁に中島法晃さん、新井真允子さん、Madblast Hiroさんの3人のアーティストがアートウォールを制作してくださいました。
今回は、完成を記念して、3人にお集まりいただき、じっくりとお話をうかがいました。インタビュー時間はとても楽しい時間で、いつの間にか自然にお名前で呼び合いながら進みました。中島法晃さんは、法晃(ほうこう)さん。新井真允子さんは、真允子(まみこ)さん。Madblast Hiroさんは、ヒロさん。というふうに・・・。その雰囲気とアーティストさんそれぞれの思いが伝わりますようにと願いをこめてお届けします。
◎今日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。今回の西壁のアートウォールは寒風吹き荒ぶ昨年12月の取り組みで、寒すぎて絵筆を動かせなかった日があったほどと聞いています。まずはご感想を聞かせてください。
ヒロさん/制作のスタートは寒さが本格的になった12月6日で、ちょうど問屋町商店街のせんい祭りの開催日。それから土曜日曜の5日間を使って、12月26日に完成しました。途中1日は風が強くて寒くて仕事にならず2時間ほどで引き上げました。寒さをちょっとなめてましたね(笑)。
法晃さん/とにかく寒かったです(笑)。
真允子さん/本当に寒かった!でも、コロナのせいで制作の場が減っていて、3人で集まって何かをするというのも久しぶりで楽しかったです。
ヒロさん/そうですね!3人で、現場で「どうする?」「どうしよう?」とディスカッションしながら進めていくのはやっぱり楽しかったです。ちなみに3人での活動は2016年7月に1か月間、柳ヶ瀬で3人展をして以来、今回で7回目です。
◎これまで何度も活動されているユニットなのですね!今回のように3人で一つの同じ壁に取り組むというのは大変なのでは?
法晃さん/そうですねえ。ヒロくんが夏に描いた南壁のカメが強烈で(笑)。だからその続きで、西壁もヒロくん一人でやればいいじゃん!って言ったんですよ。でもヒロくんがどうしても一緒にやりたいと。
ヒロさん/アハハ。僕が南壁をやっているときに、お二人には見に来てもらいまして、西壁のお話を守富先生からいただいた時、今度はぜひ3人でやりたいと強く思ったんです。3人で制作すると感覚が新鮮。自分では描けない作品が生まれる。3人で描くということの楽しさがあるんですよ。
ということで、今回は南壁からつながる構図、グラデーションを考えて。コウノトリが通路側へと入っていくようなイメージを頭に描いていました。進め方としてはスペースを3人で分けてやっていこうと考えましたが、実際は現場でのアドリブ。その都度話し合って決めていった感じです。
◎ヒロさん以外のお二人は、問屋町に来てみて印象はいかがでしたか?
真允子さん/初めて来たときは人がいない、暗いという印象でした。
法晃さん/そうそう。シャッター街の印象で寂しい、暗い感じがしました。
ヒロさん/ミール西壁も通路に面していて暗かったけれど、でも今回のアートでかなり明るくなりましたよね。
真允子さん/ホント!こうやってカラフルなアートが完成すると、久しぶりに3人で取り組んで楽しかった分、終わっちゃったことで、私が寂しくなりました(笑)。
◎そんなことをおっしゃらず(笑)、また問屋町で描いてください!では真允子さんから、作品の着眼点やモチーフについて教えていただけますか?
真允子さん/はい。私は、「猫を描いて」といわれまして。もともと動物をモチーフに描くことが多く、なかでも私自身も猫が大好き!壁画に描くなら実物大のほうが面白いと考えました。リアルサイズで描くことで、自分自身が描いたのにハッとしたりして(笑)。たとえばエアコン室外機の上の猫とか!
◎わかります!猫ちゃんを見つけてハッとしたあと、でもなぜか気持ちがほっこりします(笑)。また会いたくなるといいますか。他にもいるのかな〜?とか。
真允子さん/わぁ、嬉しい。ありがとうございます!猫好きは猫を見るとリラックスするみたいですね。今回はリアルなサイズにしたのですが、でも猫のリアルな毛色で描くと印象が暗くなるのかなと考え、壁のなかにある色、壁画に溶け込む色合いを使って、壁画のなかの世界観に馴染む猫を7匹描きました。
◎7匹みんな数えるのが楽しみ!全体の色合いについても興味深いです。
ヒロさん/はい、今回の色合いは全体的にカラフルにしました。それぞれラフを持ち寄って集まり、スタート当日にどうしていこうかと話し合って。ちなみに僕は守富先生から「鳥を描いてほしいな〜」とリクエストいただいていたので、前にもお話したようにコウノトリを描きました。幸せを運ぶコウノトリがいいかなと。
◎岐阜なのに鵜飼の「鵜」ではないんですね(笑)。海なし県の岐阜なのに、南壁に「ウミガメ」をど〜んと描かれたように。そこがやっぱりヒロさんですね!
ヒロさん/そうですね(笑)。当たり前を描いてもつまらないかなと思うので。今回のコウノトリは主張しすぎない感じで、親子のイメージも含ませて、3羽描きました。
◎なるほど‥‥。では、法晃さんの絵にはどんな思いがあるのでしょう。
法晃さん/「縄」というモチーフに最近着目していることもあり、縄を描きました。同じ問屋町商店街にある守富先生の第二事務所にうかがったとき、真っ黒な炭素繊維にヨリをかけて編んでいる様子を見せてもらいました。環境問題について長い先、未来を見据えて取り組んでいらっしゃるんだなぁと。その時に、自分がモチーフにしている縄と共通のものがあるなぁと感じたんです。
ちなみに研究室ではかなりアナログなことをしていて大変そうでした。でもこの一歩で、この作業の一つひとつで環境を変えていくのかな、とも思いましたね。
◎「縄」というモチーフ。そこにはどんな思いがこもっているのですか。
法晃さん/繊維をより合わせてつくられているのが縄ですが、そのままにしておけば解(ほど)けてしまいますよね。よった縄が勝手に開き解けてしまうことを止めるには、先を結ぶことが必要です。よった先、編んだ先を結んで留めるわけです。
コロナが始まって以来、いろんなものが変わり、生活も変わりました。でもどうにか、何かで、何かの知恵や工夫で収束させたい、どこかで結ぶ、どこかで止めたいという思いが僕にはあります。つまり、変わっていくものに抗(あらが)いたい、という僕の思いの例えとして縄がある訳なんです。
◎それは深い話ですね。
法晃さん/守富研究所の西壁の絵の中に、縄があって、それを見た人が「なんで縄?」「どうして縄があるの?」と疑問に思うことが、この研究所を知る一歩につながればと思うんです。縄って何だろう?この壁の絵は?と見る度、来る度に、その人なりに気になり、わかっていったり、興味を持つきっかけになったりしたら、とてもうれしいと思っています。
そもそも僕は絵が苦手で(いえいえ〜と真允子さんとヒロさんの声)。僕は、フィールドワークとして、人類学的に人との関わりのなかで何が生まれるか?ということに興味があるんですよ。どう人と関わるか。なぜこれが生まれたのか。それを問い、考えていくプロセスが楽しいですね。
(ヒロさん、真允子さんも『へぇ〜』と感心のご様子・・・)
続きは[後編]で!
写真は右から、アーティストの法晃さん、真允子さん、ヒロさん、そして守富所長
(スタッフC)
皆さま、こんにちは。新しい年になってあっという間に一月が過ぎてしまいました。ご挨拶が遅くなりまして申し訳ありません。2021年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、1月21日に無料配信されました「CFRPリサイクルオンラインEXPO」を視聴された方も多いかもしれません。オンラインで開催された「CFRPリサイクルオンラインEXPO」は、CFRPを循環材としていくため、再生品市場の創出に向けた取り組みを展開している経済産業省中部経済産業局の取り組みの一環です。再生品の用途拡大、サプライチェーン形成を目的に、CFRPリサイクルに特化した講演とパネルディスカッションが行われました。
「リサイクルCFRPの用途拡大に向けて」と題したパネルディスカッションでは、守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)所長の守富寛がファシリテーターを務めさせていただきました。事前にお伝えすべきところ、ご報告となってしまい重ねてお詫びいたします。また、視聴された方々から多数ご連絡をいただきました。ありがとうございました。
本日2月4日まではCFRPリサイクルに関する自社製品・技術・サービスの動画配信、マッチングということで、期間限定動画が公開されているそうです。
今後はタイムリーにご紹介していけるように心がけます。どうぞよろしくお願いいたします!
(スタッフC)
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