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皆さま、こんにちは。ブログの更新の「間」があいてしまいました。コロナ禍からなかなか抜け出せない日々ですが、会えない時間も「愛」を育てられますように!!

さて、今日はミール風ブックトーク「読んでミール?」の記念すべき第10回をお届けします。「春・夏・秋・冬」をテーマにしたブックトークを終え、次なるテーマをどうしよう?どうする?と考えまして、「音・色・香・味・触れる」に決めました。そう五感がテーマです!

今回は「音」をテーマに、ブックトーカーふたりのこころの本棚から3冊ずつ、ご紹介します。

第10回「読んでミール?」の始まり、はじまり。

 

Book Talker Naomi***

 

①恩田 陸  著
『蜜蜂と遠雷』(2016)幻冬舎

「音」というテーマを考えた時に1番初めに思い浮かんだのがこの作品でした。
この本を読んだ時、確かにピアノの音が聞こえたような気がしました。
何故だろうと検証してみますと、ピアノを弾くシーンの時、そのイメージを想像しやすい情景を文章で表現しているような気がしました。
確かに映画やドラマで使われた曲は、その曲を聞くだけで、その映像が浮かんできます。…ということは映像が鮮明に浮かぶと、曲が聞こえる(ような気がする)のかもしれません。言葉と音、そして映像。不思議なつながりですね。

この作品は有名ピアノコンクールに出場した4人の男女のお話です。
第1、第2、第3審査と進むと、最後の本選はオーケストラとの共演になります。
各審査は、それぞれに指定された中から自分で選んだ曲で構成していきますが、第2審査ではこのコンクールの為に作られた課題曲「春と修羅」があり、その後半に自分の自由な発想で弾く部分があって、作曲の力も試されます。
出場者が少しずつ落とされ、ピアノ演奏の精査がなされていく中で、各自の色々な思いが交差して、一緒にハラハラドキドキしながらラストまで一気に読んでしまいます。

なおこの作品は2019年に映画化され、その中では(想像では無い)本物の凄いピアノが聞けます。特に課題曲「春と修羅」は同じ曲とは思えないほどの各自のオリジナリティが出ています。(それぞれの役に合った有名ピアニストが影武者です)
またスピンオフ的作品「祝祭と予感」は2019年に出版され、知りたかった過去の話やその後のエピソードが明らかにされますので、合わせて読むと更に一層楽しめると思います。
(参考)「祝祭と予感」(2019)幻冬舎

 

② 宮下 奈都  著
『羊と鋼の森』(2015)文藝春秋

これは高校生の時に偶然見たピアノの調律に魅せられて、何のバックグラウンドも無いまま調律師を目指した少年の成長物語です。

ピアノというのは、森から切り出された木の枠の中で羊の毛で作られたハンマーが鋼の弦を叩いて音が出ます。それを調律師が色々な技を使って音階に作りあげます。
その基準音となる「ラ」の音は時代と共に変化して、モーツァルトの頃は422ヘルツだったのが戦前には435ヘルツ、そして今は440ヘルツが世界共通になりました。(因みに440ヘルツは赤ん坊の産声の高さです)
時代と共に少しずつ高くなるのは明るい音を必要として、求めるようになったからでしょうか。
そして調律師は弾く人の好みによって、音を高く響かせる事も、軽やかにする事も、重厚な音にする事も出来、ピアノコンクールでは必ず調律師が側にいて、ひとりひとりに合わせ、その都度調整している事は『蜜蜂と遠雷』でも出てきました。
ただ人の感性は色々で求める音を知るのは至難の業。迷う少年に、彼が調律師を目指すきっかけとなった師は「自分の理想とする音は小説家の原民喜(はらたみき)の文章の中にある」と語ってくれました。
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少し甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
理想の音を求めまだまだ修行が続く少年を心から応援したいと思います。

 

③ 町田 そのこ  著
『52ヘルツのクジラたち』(2020)
中央公論新社

クジラは10〜39ヘルツで鳴くが、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴くという世界で一頭だけのクジラが確認されています。たくさんの仲間がいるはずなのに、何も届かない。何も届けられない。そのため世界で一番孤独だと言われているクジラです。

聞き取れない52ヘルツの声を上げていた自分の声を聞き、救い出してくれた人…その大切な人の声に気付く事が出来ずに死なせてしまった事実に傷ついていた女性は、自分と同じように52ヘルツの声を上げている少年を助けようと動き始める。
この作品の中には虐待や育児放棄、そしてジェンダーやモラハラなど数々の問題が含まれています。
主人公は自分の辛い経験から少年の52ヘルツの声を聞くことが出来たのですが、このお話の中にはそういう経験が無くても一生懸命聞こうとし助けようと努力をする沢山の人達も描かれています。
52ヘルツの声は容易には聞こえないかもしれませんが…常に聞こうと努力する人でありたいと思います。
本作は「2021年本屋大賞」受賞作です。

 

Book Talker  Chie***

 

1 小泉文夫 著

『小泉文夫フィールドワーク 人はなぜ歌をうたうか』(1984)

「音」というテーマで思いを巡らせたときに思いついたのがこの本です。今から40年近く前の高校から大学生にかけての頃に小泉文夫さんという民族音楽研究者の存在を知りました。クラシックやジャズ、ロック、演歌といったジャンルの普段よく耳にする音楽からは離れて、もっと民族的といいますか土着的な音楽があるのだと先生の本をきっかけに気づいたわけです。それは音楽というよりも、音とかリズムといった原始的で根源的なものへの興味をゆっくりと掘り起こす旅をするかのような面白さで・・・印象深いのは、たとえばエスキモーの人たちのなかでもカリブーではなくクジラを食べる地域のエスキモーたちはリズム感が良いというエピソード。カリブーは一人でも狩りができるけれども、クジラは巨大で一人ではとても獲ることができず、しかもクジラを獲るチャンスは年に二回しかないという。つまりチームワークを整えなければ、村全体の半年分の食料や生活物資をまかなえないのです。そこで大勢で声を合わせ、リズムを合わせる練習をした。それが歌や太鼓だったという話です。これは生きるために拍子を揃えるという例の一つですが、ご存じのように太鼓の音は、伝達という意味からも生きていくのに重要な要素です。

小泉先生の興味の広がりはとめどなく、世界を駆け巡られました。現地へ行き、現地の人の歌や音を集め(録音して)、歴史を探り、「なぜ?」と考察する。その果てしないフィールドワークを文章に書き起こしてくださった労力は、56歳という若さで亡くなった先生の、まさに命を削っての作業だったのではとも思うのですが、きっと小泉先生ご自身は、この驚きや感動を独り占めしてはならぬと突き動かされてお書きになったのではと思います。世界や人類は多様であるということを「音」を通じて実感されたことが原動力であったのではないでしょうか。

昔、兼高かおるさんという女性が世界を飛び回る旅のテレビ番組がありました。インターネットもない時代に、ありとあらゆる世界の風景や人々、暮らしの音も届けてくれました。小泉先生の本も世界の多様を届ける貴重な記録であり道標であり続けると思います。

小泉文夫先生の著作としては『音のなかの文化』『呼吸する民族音楽』(ともに1983、青土社)もおすすめします!

 

2 村上春樹 著

『遠い太鼓』(1990)講談社

村上ファンのなかには、長編好き、短編好き、エッセイ好き、全部好きといろいろなタイプがいらっしゃると思います。私の場合はたぶん全部好きに入ると思いますが(笑)、「音」というテーマに照らし合わせたときに思い浮かんだのがこのタイトル名を持つエッセイ集です。『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』を執筆した頃、彼は日本では暮らしていませんでした。イタリアやギリシアなどヨーロッパにいたのです。その頃に綴った旅行記であり滞在記は、海外旅行に行けない今、異国の空気を感じるのにも良い本です。

今あらためて読み返すと、村上さんが日本を離れて執筆をしようと思った40歳の頃、精神的にクリアになれるところに身を置きたかったのではと感じます。頭のなかに蜂を飼っているらしく(それはおそらく耳鳴りのことと思います)、蜂のぶんぶん音も含め、さまざまな雑音にさいなまれる日々から解放されたかったのではと。村上さんのような人気作家でなくとも、いつもの音、絶え間なく続く音から逃れたい時はあります。音とは風景であり、環境であり、内的な思いの重なりから生まれる何かかもしれません。うるさく感じて離れたいと思うけれども常にともにある。そして、ある時、ふっと別の音にもひかれる。

この本はこのように始まります。

ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきた。その音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。

タイトルの「遠い太鼓」はトルコの古謡からとったものとか。音に誘われて旅に出る。それも人間らしい素朴な行いなのかもしれません。音の原始は、あるいは、音を求める原始は、生きているものがすべて持つ、脈動なのではと、私は勝手に想像しているのですが・・・。

 

3 ウィリアム・ブレイク作 池澤春菜・池澤夏樹 訳

『無垢の歌』(2021)毎日新聞出版

ウィリアム・ブレイク(1757〜1827)は産業革命期のロンドンに生きた詩人で画家、銅版画職人。自らの詩と彩色版画による幻想的な詩集をつくりました。また預言詩『ミルトン』に収められた詩「エルサレム」はイギリスの国家として歌われています。ブレイクの詩はさまざまな分野の作家に影響を与え、日本では柳宗悦、ノーベル賞作家の大江健三郎さんもその一人です。

さて、そのようなブレイクの詩は私には難しいのでは?と長年思っていたのですが、最近手にして感銘を受けたのが池澤春菜・池澤夏樹の訳によるこの本です。親子でもあるふたりがブレイクの詩の訳と解説を分担していて、その言葉がとてもやさしく美しく、調子や音色が素敵なのです。

ブレイクの詩(歌)には音と文字とその両方の美しさがあると、訳者の春菜さんはまえがきで綴っています。「ブレイクの言葉の中にある優しさ、愛おしさ、明るさや清らかさ、善きものに向かう心をこぼさずすくえるように」日本語にしたそうです。

思えば詩(歌)は音から生まれ、文字から生まれています。両者はきっと不可分の存在で、音の聞こえない人、文字の見えない人にも、その両方を届け合うことで、意味や情景、思いとなって膨らみ、詩が伝わるのかもしれないと思います。

池澤親子が訳者となって心をこめて届ける無垢の歌たち。ブレイクの音と文字の両方の良さをこぼさぬように、大切に私たちに渡してくれている気がします。

(スタッフN&C)

 

どこかから音が聞こえてきそう。風や雲の流れ、物語の言葉のなかに・・・。

皆さま、こんにちは。岐阜は青空がつづいて気持ちのよい日です。いかがお過ごしでしょうか。

さて、守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)の南壁を含む、全長130メートル、高さ20メートルの岐阜問屋町二丁目協同組合の南壁が「ぎふアートウォール」としてお披露目となる機会、「ぎふアートウォール完成式」が今週3月27日(土)午後1時から開催されますのでお知らせいたします。

当日は関係者の皆さまもご列席される予定で、ご来賓の方々のスピーチ、空と雲のアートウォールの監修をされた古川秀昭先生(岐阜県美術館前館長、現在はOKBギャラリー館長)のコンセプトのお話などを聞くことができます。

そして完成式開催前のひとときを盛り上げるパフォーマンスも楽しみ!

12時20分頃からSJCジャズオーケストラの皆さんによる演奏、さらに、12時45分頃からキッズたちが空と雲のアートウォールを舞台背景に可愛いパフォーマンスを繰り広げてくれる予定です!ぜひパフォーマンス披露のタイミングからお立ち寄りください。

当日はアートウォール前の道路を使用させていただき完成式を行います。道路から見ていただいても、JR岐阜駅からのペデストリアンデッキ(歩行者の通行専用の高架高架歩道)から見ていただくのも楽しいのでは!と思います。

雨天の場合は岐阜問屋町二丁目アーケード内が会場となりますが・・・今日のように綺麗な春の空が広がっていることを願います!!

感染症対策(マスク着用&ソーシャルディスタンス)も忘れずお楽しみください!

 

【 守富所長テレビ出演のお知らせ】

ぎふアートウォール事業に関して新聞各紙、メディアに取材をしていただいておりまして、このたびテレビの放映時間が決まりましたのでお知らせいたします。ミールの守富所長も登場しますのでご覧くださいませ!

◎3月26日(金)午後6時30分〜 NHK「まるっとぎふ」

◎4月2日(金)午後6時〜(15分番組)ぎふチャン「あなたの街から岐阜市」

 

(スタッフC)

 

皆さま、おはようございます。昨日から寒さが戻り、空は晴れやかながらも風が冷たい!岐阜です。いかがお過ごしでしょうか。

さて、昨夏より守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)の南壁、西壁でアートウォールを展開していることを中心に、ブログでお伝えしていますが、昨年末よりミールの南壁を含む、岐阜問屋町二丁目商店街の南壁(通称:レトロ壁)の全長130メートルにおよぶ巨壁をアートウォールにという岐阜問屋町二丁目協同組合の事業がスタートしました。足場を組み、長年の風雨で劣化した場所の補修をして下地を施し、現在は岐阜県美術館前館長の古川秀昭先生のアート監修と工事事業者の熱意あるお仕事により巨壁へのペインティングが進んでいます。足場は今月中にとれる予定で、全容がお目見えするも間近になりました。

そんな日々、ミールの守富寛所長もメディアの皆さんから取材を受けております!内容はぜひ新聞記事をご一読くださいませ。朝日新聞(2月4日)と岐阜新聞(2月21日)の記事については、すでにミール公式ツイッターにて共有させていただいております。

ミール公式ツイッターhttps://twitter.com/OfficialMeel/

また近日中にテレビでも放送される予定ですので、日時がわかりましたらこのブログでもお伝えいたします。

ミールの壁でのチャレンジがこのような町づくりにもつながっていき、うれしく思っています。岐阜問屋町で仕事をする一員としても、これからの展開をずっと応援していきたいと思います。

またミールの関連リンクに「岐阜問屋町二丁目協同組合」ウェブサイトをアップいたしました。岐阜問屋町+レトロ壁の検索ワードでもご覧いただけます。(レトロ壁は守富所長のネーミングです!)あわせてどうぞよろしくお願いいたします。

 

◎ミールの南壁、西壁の取り組みについてのブログはこちら

https://moritomimeel.jp/守富所長と/

https://moritomimeel.jp/ミール南壁アートウォール/

 

◎岐阜問屋町二丁目協同組合ホームページ

https://moritomimeel.jp/tonyamachi2/

 

 

写真は取材時。左が朝日新聞、右が読売新聞の記者さんの撮影の様子です!

 

 

(スタッフC)

皆さま、こんにちは。守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)の西壁を活用したアートウォール。その制作に取り組んでくださった3人のアーティストへのインタビュー、引き続き[後編]をお届けします。

 

 

◎法晃さんのお話を聞いて、アートウォールを通じて何かに気づいたり、人とつながったりしたらいいなと思いました。昨年皆さんが取り組まれた豊田市の保見団地での保見アートプロジェクト※1でもきっといろんな経験をされたことと思います。

法晃さん/保見団地のアートプロジェクトのときは半年くらい会議をしても何も決まらなかったので、話し合っているだけでなく、とにかく行動することでわかってくることがあるんじゃないかと気づきました。いかにして住民を巻き込むか、ですね。残念なこととしては保見団地ではせっかくのアートに上書きされてしまい、それをやった人が逮捕されるということも起きました。そのことは住民が通報した、ということでもあるんだろうなと想像するんですが、通報したということは、「残しておきたい絵」だったということなのかなぁとも思えるんです。それまでは落書きし放題の無法地帯といってもいい環境だったので。とはいえ、逮捕者が出てしまったというのは悲しい面もありますね。

壁と絵ということを考えると、そもそも落書きって何?という「問」が常にあります。その答えはとても難しい。動物のマーキングみたいなものかなとも思うんですけど(笑)。いずれにしても消す、残すという選択のときに、「残そうよ!」という絵だったらいいなと思いますけどね。

※1 外国籍の住民が半数以上を占める保見団地(愛知県豊田市)での取り組みで、アートを通じたワークショップを重ね、住民同士のコミュニケーションを図りながら活動。法晃さんがアートプロジェクトのプロデュースを担い、真允子さん、ヒロさんもアーティストとして参加。2020年3月29日、団地25棟1階の通称「憩いの場」の空間は、かつての落書きも一部生かしながら、画家やイラストレータによる鮮やかな絵に包まれて生まれ変わった。

(下の写真はアートプロジェクトをまとめた冊子より、法晃さん、真允子さん、ヒロさんのページ)

 

◎ますます深いお話です。真允子さんがアートウォールのような活動とつながったのはどういった経緯ですか?

真允子さん/私はもともと油絵をやっていて、家にこもってキャンバスに向かうというのが基本でしたし、今もそうです。でもしばらくの間、絵をやめていた時期があって、再開したときに東日本大震災が起きたことが大きな転機になりました。

どんな人もそうだったと思うんですけど、やりたいことが一瞬で無くなる、一瞬にして日本が暗くなるということを経験して・・・。それで日本を明るくするためには自分に何ができるか?と考えました。当時は子育ての最中だったし、ボランティアに行く時間もない。でも暗い日本が明るくなり元気になり復興にたどりつこうとしている時に、現地で関わることができなくても、私も地元で何かできないか?アートの力を注げないかなと思ったんですよ。うまく言えませんが、地域貢献として。

そんな頃に、それまで家でキャンバスに向かっていた私が、法晃さんとヒロさんに出会って、まちのなかでライブペイントをするという、屋外で絵を描くというアートを知りました。外で絵を描いていると、不思議に人が見に来てくれて、自然にまちに賑わいが生まれるということを実感したんです。その体験を通じて、絵は何に描いても地域貢献につながるんじゃないかなと思いました。家でキャンバスに向かっているのも、壁画でも、アートをするということとしては違和感がなかったというのが、今の自分につながっていると思います。

 

◎外へ出て、人に見てもらいながら絵を描くという新鮮な体験が、アートができる可能性を感じる出来事だったんですね。ヒロさんは以前のインタビューで「アートウォールはパブリックアートという責任がある」と話してくださったのが印象的でした。

ヒロさん/はい、そうですね。いつもそう思って取り組んでいます。もともと僕はグラフィティが好き、壁画を描きたい。もっと言えば、表現したい、絵を描くのが好きというシンプルな思いから来ているんです。壁画はいろんな人に見てもらえる。自分がいる証しというんでしょうか、存在が残せる。作品が風景のなかに残る、馴染むことができる。でも、その一方で、生み出したものが違和感となる場合もあるということを忘れずにいたいんです。

法晃さん/そうなんだ。僕はパブリックアートという意識はなかったなぁ(笑)。誰が描いてもいいけれども、たまたま自分が描いたということと思っています。もともと絵を描くことの好きな人は、自分でもいろんな場所、いろんな機会に絵を描きたいと思いがあると思う。だから今回のミールの南壁や西壁を見た人が「どうしたら描けますか?」「私も描けるんでしょうか?」と、ミールや商店街の人たちとコミュニケーションするというのが大事だと思うんです。

何て言ったらいいのかな・・・ここに描いている人たちがすごいんじゃない、ということ。アートウォールを見た人が「オレならこういうふうに描きたいな」と思ったら、すでに描いてある絵への上書きではなくて、そこに描くスペースがあればそこへ行ってお願いしてみたらいい。「街の人」と「描きたい!と言っている人」がつながっていくといいなぁというのが僕の願い。前にも話しましたが、落書きという言葉は本当に難しい。何をもって落書きというか。自分たち作家もある程度自由を与えられて描いているということでは、落書きなんじゃないかなと思うことがあります(笑)。

 

◎しかも落書きは良いもの?良くないもの?どういうもの?と考えるとますます難しいテーマですね。

法晃さん/問屋町のような規模のコミュニティだったら、人のつながりが基本だと思うんです。東京やそのほかの大きな都会とは違う。描きたい人が飛び込めるよう、街の人も心を開いて受け入れてくれるような、そんな人のつながりを大切にしていけたらいいですよね。

◎「人とのつながり」はミールのテーマの一つでもあります。現在、このミールの南壁を含む全長130メートルの巨壁をアートウォールにする取り組みが国からの補助金も支えにして進行中ですが、このアクションも含めて、「まち」と「アート」、「アートウォールのあるまち」について、代表してヒロさん、お願いいたします。

ヒロさん/アートがあることでまちが明るくなることはいいな、と思うんです。僕はもっと描きたいですね。今回、リアルタッチの真允子さん、コンセプチャルな縄をモチーフにした法晃さん。そして僕、と。絶対に楽しいことがあるなーと思って取り組みましたから。これをきっかけにいろんな人の作品が増えていくといいなぁと思っています。

いろんな人の絵があるから面白い。自分一人で描いていても楽しくない。もちろん、観る人にとっても変化があるといいなと思います。ただ・・・。

 

◎ただ?

ヒロさん/僕個人の考えとしては、自分もプロとして生きているので、どんなプロジェクトでも場所でもそうですが「このスペースに描かせてあげるから、描いてね!」という視点や発想を超えて仕事ができたらといつも願っています。もちろんケースバイケースですが、仕事料金が少なくても、たとえば多くの人が描く現場を見てくれるということなら受けたいと思います。

 

◎それはとても大切なお話ですね。「アート」と「まち」と「人」が楽しく明るくつながるために、ミールも大事に考えていきたいと思います。今回、西壁にも「人とのつながりを大切にしよう」というメッセージを小さく入れてくださいましたね!それに加えて絵だけでなく、文字もアートになっているのも楽しい仕掛けです!

ヒロさん/じつは壁面に設置してあるボックス部分、そこを最初は避けていたんです。みんなで背景をつけたあと、「さて、ここどうする?」ということになって。

真允子さん/最初は、鳥かごや水槽という、モチーフやボックスの形にちなんだアイデアが出たんだっけ・・・。

法晃さん/でもボックスの扉どうしの境目の黒が強調されてしまうのと、まわりが淡いグラデーションだったので、ここはパキッとした感じにしたらということになって。僕はもともと文字をつかった作品もつくっていたので、このボックスの凸部分を利用して文字をデザインすることにしたんです。

 

◎なるほど、そこに浮かび上がるのがミールを表す文字ですね。ぜひ実際に見て楽しんで欲しいです!(笑)

今日は楽しくて深くて、やっぱり楽しいお話をたくさんしてくださって、本当にありがとうございました!

*今回のミール西壁のアートウォールの様子をヒロさんが動画にされました。

ぜひご覧ください!

https://www.youtube.com/watch?v=OpFYQU7wovM

 

*アーティストのプロフィール、アート活動などは下記ウェブサイトをご参照ください。

中島法晃さん(岐阜県本巣市出身、美術家)

http://nakashimahoukou.com/

新井真允子さん(岐阜県羽島市出身、画家)

https://www.instagram.com/mamimami_artwork_0303/

Madblast Hiroさん(岐阜県各務原出身、画家)

https://www.madblasthiro.com

 

(スタッフC)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。立春も過ぎ、あとは暖かくなる季節を待つばかりですね。

さて、昨年夏の守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)南壁へのアートウォールに続き、昨年末に、通路に面するミール西壁に中島法晃さん、新井真允子さん、Madblast Hiroさんの3人のアーティストがアートウォールを制作してくださいました。

今回は、完成を記念して、3人にお集まりいただき、じっくりとお話をうかがいました。インタビュー時間はとても楽しい時間で、いつの間にか自然にお名前で呼び合いながら進みました。中島法晃さんは、法晃(ほうこう)さん。新井真允子さんは、真允子(まみこ)さん。Madblast Hiroさんは、ヒロさん。というふうに・・・。その雰囲気とアーティストさんそれぞれの思いが伝わりますようにと願いをこめてお届けします。

 

 

◎今日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。今回の西壁のアートウォールは寒風吹き荒ぶ昨年12月の取り組みで、寒すぎて絵筆を動かせなかった日があったほどと聞いています。まずはご感想を聞かせてください。

 

ヒロさん/制作のスタートは寒さが本格的になった12月6日で、ちょうど問屋町商店街のせんい祭りの開催日。それから土曜日曜の5日間を使って、12月26日に完成しました。途中1日は風が強くて寒くて仕事にならず2時間ほどで引き上げました。寒さをちょっとなめてましたね(笑)。

 

法晃さん/とにかく寒かったです(笑)。

 

真允子さん/本当に寒かった!でも、コロナのせいで制作の場が減っていて、3人で集まって何かをするというのも久しぶりで楽しかったです。

 

ヒロさん/そうですね!3人で、現場で「どうする?」「どうしよう?」とディスカッションしながら進めていくのはやっぱり楽しかったです。ちなみに3人での活動は2016年7月に1か月間、柳ヶ瀬で3人展をして以来、今回で7回目です。

 

◎これまで何度も活動されているユニットなのですね!今回のように3人で一つの同じ壁に取り組むというのは大変なのでは?

 

法晃さん/そうですねえ。ヒロくんが夏に描いた南壁のカメが強烈で(笑)。だからその続きで、西壁もヒロくん一人でやればいいじゃん!って言ったんですよ。でもヒロくんがどうしても一緒にやりたいと。

 

ヒロさん/アハハ。僕が南壁をやっているときに、お二人には見に来てもらいまして、西壁のお話を守富先生からいただいた時、今度はぜひ3人でやりたいと強く思ったんです。3人で制作すると感覚が新鮮。自分では描けない作品が生まれる。3人で描くということの楽しさがあるんですよ。

ということで、今回は南壁からつながる構図、グラデーションを考えて。コウノトリが通路側へと入っていくようなイメージを頭に描いていました。進め方としてはスペースを3人で分けてやっていこうと考えましたが、実際は現場でのアドリブ。その都度話し合って決めていった感じです。

 

 

◎ヒロさん以外のお二人は、問屋町に来てみて印象はいかがでしたか?

 

真允子さん/初めて来たときは人がいない、暗いという印象でした。

 

法晃さん/そうそう。シャッター街の印象で寂しい、暗い感じがしました。

 

ヒロさん/ミール西壁も通路に面していて暗かったけれど、でも今回のアートでかなり明るくなりましたよね。

 

真允子さん/ホント!こうやってカラフルなアートが完成すると、久しぶりに3人で取り組んで楽しかった分、終わっちゃったことで、私が寂しくなりました(笑)。

 

 

◎そんなことをおっしゃらず(笑)、また問屋町で描いてください!では真允子さんから、作品の着眼点やモチーフについて教えていただけますか?

 

真允子さん/はい。私は、「猫を描いて」といわれまして。もともと動物をモチーフに描くことが多く、なかでも私自身も猫が大好き!壁画に描くなら実物大のほうが面白いと考えました。リアルサイズで描くことで、自分自身が描いたのにハッとしたりして(笑)。たとえばエアコン室外機の上の猫とか!

 

 

◎わかります!猫ちゃんを見つけてハッとしたあと、でもなぜか気持ちがほっこりします(笑)。また会いたくなるといいますか。他にもいるのかな〜?とか。

 

真允子さん/わぁ、嬉しい。ありがとうございます!猫好きは猫を見るとリラックスするみたいですね。今回はリアルなサイズにしたのですが、でも猫のリアルな毛色で描くと印象が暗くなるのかなと考え、壁のなかにある色、壁画に溶け込む色合いを使って、壁画のなかの世界観に馴染む猫を7匹描きました。

 

 

◎7匹みんな数えるのが楽しみ!全体の色合いについても興味深いです。

 

ヒロさん/はい、今回の色合いは全体的にカラフルにしました。それぞれラフを持ち寄って集まり、スタート当日にどうしていこうかと話し合って。ちなみに僕は守富先生から「鳥を描いてほしいな〜」とリクエストいただいていたので、前にもお話したようにコウノトリを描きました。幸せを運ぶコウノトリがいいかなと。

 

 

◎岐阜なのに鵜飼の「鵜」ではないんですね(笑)。海なし県の岐阜なのに、南壁に「ウミガメ」をど〜んと描かれたように。そこがやっぱりヒロさんですね!

 

ヒロさん/そうですね(笑)。当たり前を描いてもつまらないかなと思うので。今回のコウノトリは主張しすぎない感じで、親子のイメージも含ませて、3羽描きました。

 

 

◎なるほど‥‥。では、法晃さんの絵にはどんな思いがあるのでしょう。

 

法晃さん/「縄」というモチーフに最近着目していることもあり、縄を描きました。同じ問屋町商店街にある守富先生の第二事務所にうかがったとき、真っ黒な炭素繊維にヨリをかけて編んでいる様子を見せてもらいました。環境問題について長い先、未来を見据えて取り組んでいらっしゃるんだなぁと。その時に、自分がモチーフにしている縄と共通のものがあるなぁと感じたんです。

ちなみに研究室ではかなりアナログなことをしていて大変そうでした。でもこの一歩で、この作業の一つひとつで環境を変えていくのかな、とも思いましたね。

 

 

◎「縄」というモチーフ。そこにはどんな思いがこもっているのですか。

 

法晃さん/繊維をより合わせてつくられているのが縄ですが、そのままにしておけば解(ほど)けてしまいますよね。よった縄が勝手に開き解けてしまうことを止めるには、先を結ぶことが必要です。よった先、編んだ先を結んで留めるわけです。

コロナが始まって以来、いろんなものが変わり、生活も変わりました。でもどうにか、何かで、何かの知恵や工夫で収束させたい、どこかで結ぶ、どこかで止めたいという思いが僕にはあります。つまり、変わっていくものに抗(あらが)いたい、という僕の思いの例えとして縄がある訳なんです。

 

 

◎それは深い話ですね。

 

法晃さん/守富研究所の西壁の絵の中に、縄があって、それを見た人が「なんで縄?」「どうして縄があるの?」と疑問に思うことが、この研究所を知る一歩につながればと思うんです。縄って何だろう?この壁の絵は?と見る度、来る度に、その人なりに気になり、わかっていったり、興味を持つきっかけになったりしたら、とてもうれしいと思っています。

そもそも僕は絵が苦手で(いえいえ〜と真允子さんとヒロさんの声)。僕は、フィールドワークとして、人類学的に人との関わりのなかで何が生まれるか?ということに興味があるんですよ。どう人と関わるか。なぜこれが生まれたのか。それを問い、考えていくプロセスが楽しいですね。

 

(ヒロさん、真允子さんも『へぇ〜』と感心のご様子・・・)

 

続きは[後編]で!

 

写真は右から、アーティストの法晃さん、真允子さん、ヒロさん、そして守富所長

 

 

(スタッフC)

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