ウカンムリ日記
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皆さま、こんにちは。

今日は久しぶりにミール風ブックトーク「読んでミール?」をお届けします。今回は五感につながる「一文字」テーマシリーズの3回目!「音」「色」「味」につづき、「香」をテーマにお届けします。風薫る季節、どんな本が並ぶでしょうか。

今回も、ブックトーカーふたりのこころの本棚から3冊ずつ、ご紹介します。

第13回「読んでミール?」の始まり、はじまり。

 

Book Talker Naomi***

 

1  中川 李枝子  作
大村 百合子  絵
『ぐりとぐら』(1963)福音館

誰もが知っている「ぐりとぐら」。
森の中で大きな卵を見つけたぐりとぐらが作った食べ物は何でしょう?
その美味しそうな匂いに惹きつけられて森の中の動物たちも集まってきます。
大きなフライパンで作るのでホットケーキと間違いやすいのですが…実はカステラです。
その作り方を試してみたのが青山美智子著「お探し物は図書室まで」に出て来る婦人服販売員の朋香。誰もが知っている「ぐりとぐら」でも覚えている箇所は人それぞれで不思議です。楽しいブックトークの中で人と人が繋がっていく…これもまた素敵なお話です。
(参考)青山美智子 著
『お探し物は図書室まで』(2020)ポプラ社

 

 

2  伊吹 有喜  著
『犬がいた季節』(2020)双葉社

犬のコーシローは高校の犬です。
昭和63年に自分を高校で飼う為に頑張ってくれた初代コーシロー会の生徒達を始め、時代を移しながら様々な生徒達の青春を見つめてきました。
ところどころでコーシロー目線の文章が差し込まれるのですが、その中で「匂い」が重要なポイントになっています。
花の匂いやパンの匂い、そして恋の匂いまでもコーシローは嗅ぎ分けられます。
そして最終話にはそれまでの5つの話に登場してきた人たちのその後も描かれていて…きっとコーシローも喜んでいることでしょう。

 

 

3  宮尾登美子 著
『伽羅の香』(1987)中公文庫

*香道(こうどう)とは
日本の芸道の一つで香木を焚いて出た立ち上がる香りを賞翫(しょうがん/そのものの良さを味わうこと)し、さらに礼式や作法を加えたもの。

このお話は香道に魅せられた葵という女性のお話です。
素人にはなかなか難しそうな世界ですが、葵は八つで初めて聞いたお香の香りから、かぐや姫を連想する等、香りに対する感性が飛び抜けて優れていて、「香道」の素養を生まれながらに持っていたと言って良いくらいでした。
裕福な山林王の一人娘として育ちましたが、夫や両親を相次いて亡くし、更に子供にまでも先立たれた後、唯一の生きる希望である香道復興の為に莫大な財産を投げ打って尽くします。
しかし思わぬ裏切りにあい身も心もボロボロになった時、再び生きる力となったのもまたお香の香りでした。
他の人が真似出来ない「香と共に生きる人生」を自ら選んで突き進んだ葵。
こういう人がいたからこそ、脈々と文化が受け継がれていくのかと思います。

私も今度「香道」なるものを体験してみたいです。かぐや姫を感じる事が出来るでしょうか?

 

 

Book Talker  Chie***

 

1 千葉治子・飯田智子 著

『素敵にアロマテラピー』(2012)保健同人社

心身に不調を感じる親しい人へ、ほんのわずかでも安らぎを感じてもらえないだろうか、とつくづく考えた時期がありました。そして、ふっとたどりついたのがアロマテラピーでした。アロマオイルの香りとその組み合わせの不思議に引き込まれながら、さまざまな本を読み漁り、化学実験のごとく日々ブレンドを試み、せっせと友人たちに渡しました。そんなある日、友人から乳がんになったと告げられました。ああ、私にできることは?と思いを巡らせたときに、また辿り着いたのがアロマテラピーです。

しかし、ホルモンへの作用もあるアロマを乳がんの罹患者に用いても大丈夫だろうか?と立ち止まり、大きなためらいに変わりました。そこに手を差し伸べてくれたのが本書です。本の副題は「乳がんの人の心と体に」。著者のお二人は乳がんを体験されたかたです。お二人が、考え抜いて言葉や写真を選ばれたことを感じます。目には見えないやさしい香りのしおりが挟まれているような気持ちに何度もなりました。

残念ながら本の編集作業中に著者のお一人は亡くなりましたが、きちんとカタチとなり、迷える人の手に届いたのはありがたいことです。今は私の手元にあるけれど、必要な方にそっとお渡ししたくなる本です。

 

2 阿刀田高 著

『瓶詰の恋』(1984)講談社文庫

短編の名手、阿刀田高さんの作品を読むと、いつもふわりとどこかの国に行ってくるような感覚に陥ります。束の間の脳内旅行の最中、小説に登場するおしゃれな小道具が気になったりするのですが、「瓶詰の恋」に出てくるのは香水瓶。一夜をともにした美しい女性が残していったノワール・ノワールという香り。それは彼女とのめくるめく濃厚な時間を蘇らせてくれるものとなり、惜しみながら瓶の蓋を開け、その香りを嗅ぐ日々の果てに起きたことは・・・。

結末を知っていても、また思い出して読みたくなるのは、窮屈な日々から抜け出して、ふわりと心を浮かせて異世界を味わいたくなるからかもしれません。叶わないことは多くても、夢見ることは捨てなくていい、というふうにも、今なら読み解きたくなります。

 

3 サラ・B・フッド 著

『ジャム、ゼリー、マーマレードの歴史』(2022)原書房

原書房の「食」の図書館シリーズはどのテーマも興味深く、身近な食べ物を深堀りしていて、世界に広まった歴史、経済的な観点など勉強になることばかり。本書『ジャム、ゼリー、マーマレードの歴史』も大変面白く、旧石器時代後期まで遡るジャムの起源から始まり、16世紀から20世紀までの1世紀ごとのドラマチックな変遷を丁寧にたどっています。

ジャムとは果物と砂糖があればできるもの。果物が持つペクチンという成分と糖と酸の絶妙なバランスによって美味しくなるわけですが、出発点はみずみずしい果物を旬でない時期にも食べるための工夫。オレンジ、ブルーベリー、桃・・・と、それぞれの果物が持つ香りを秘めたジャムをひとさじすくう時は幸せです。ちなみに預言者として知られるノストラダムスは料理研究家でもあったらしく、レシピ付きのジャムに関する書も残しています。ノストラダムスがジャムおじさんだったとは知りませんでした。(ミール関係者にもジャムおじさんがいて、季節ごとにおいしいジャムを作ってくれます!!)

ところで、私がこの本を読んで初めて知ったことの一つに、19世紀末ごろからカナダでは農家のご婦人たちが余った果実などでジャム作りに取り組み、その活動がアメリカやイギリスにも広がり、地域や国を超えて苦しむ人や子どもたちにジャムを送ったということ。戦時中、カナダでは「イギリスにジャムを」という婦人会と赤十字の取り組みが国家プロジェクトにまで展開。国がボランティアに対し優先的に砂糖を配分したそうです。

色鮮やかで栄養満点なジャム。蓋を開けたときにふわりと感じる香りは幸福そのもの。平和な食卓を思い浮かべる人が多かったのではないでしょうか。

 

(スタッフN&C)

 

 

 

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