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皆さま、こんにちは。

今日はミール風ブックトーク「読んでミール?」の第8弾をお届けします。

テーマは「秋」。食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋といろいろありますが、すべてを満たすのが「読書の秋」かもしれません。ですので、どんな本もこの季節の心地よさのなかで存分に味わっていただきたいのですが、あえて「秋」をテーマにブックトークを試みます!

今回もブックトーカーふたりのこころの本棚から3冊ずつ、ご紹介します。

第8弾「読んでミール?」の始まり、はじまり。

 

Book Talker Naomi***

 

①  新美南吉 著

『ごん狐』(1932年発表)  新美南吉童話集(大日本図書)他多数

教科書にも載っている日本人なら一度は読んだ事のある「ごん狐」。
秋の彼岸花を見るたびに、赤い布のように咲き続いた彼岸花の中を白いかみしもつけた兵十がおっかあの位牌を抱いてしょんぼり歩いている姿が目に浮かびます。
お店に栗や松茸を見かけるようになると兵十の為に家の戸口にそっと置いて行くごんを思います。
私が通う朗読教室でも何度も扱った作品で、そのたびに泣かないように読むのに苦労した作品でもあります。
でも最近、実はラストは悲しいだけの場面では無いと思うようになりました。
ごんはひとりぼっちで寂しく、同じようにひとりになった兵十に自分を重ね合わせます。でも自分がせっかく持っていった栗や松茸が神様のおかげにされている事につまらなく思っていたので、最後の最後で兵十に分かってもらえた事で一瞬でも幸せを感じたのではないかと思います。…いやそう思いたいです。

 

② レオ・バスカーリア 著
『葉っぱのフレディ いのちの旅』絵本(1998) 童話屋

この本はアメリカの著名な哲学者レオ・バスカーリア博士が書いた生涯唯一の絵本です。
葉っぱのフレディの目を通して葉っぱの一生=自然の営みが描かれています。
それは人間の一生にも通じるものがあり、子供たちが死というものを考えたり、人生を考えるきっかけになるような本だと思います。
始めは文章だけの物を読んで心が震えたのですが…今回絵本を取り寄せてみて、素敵な写真と移り変わっていくフレディの姿のイラストに、より一層の感動をおぼえました。ぜひ絵や写真も一緒に楽しんでいただければと思います。
尚、この本は四季を通して描かれていますが…葉っぱが劇的に変化する秋のイメージが強くて「秋」の本に選びました。

 

③上橋菜穂子 著
守り人シリーズ (12冊)
精霊の守り人
闇の守り人
夢の守り人
虚空の旅人
神の守り人(上・下)
蒼路の旅人
天と地の守り人(全三部)
流れ行く者(短編集)
炎路を行く者(番外編)

上橋菜穂子はこのシリーズで2014年に国際アンデルセン賞を受賞した他、バチェルダー賞、野間児童文芸新人賞、路傍の石文学賞、巌谷小波文芸賞など数々の賞を受賞しています。

これはファンタジーと分類される架空の世界のお話で、想像上の国や人々、それに異界の魔物や精霊までも出てくる物語です。
主人公はバルサと呼ばれる凄腕の女用心棒です。年齢は主役としては珍しい30代と中年に差しかかる年齢ですが、これまでの危険と隣り合わせの生活から沈着冷静に状況を見極め対処し、沢山の男を相手でも決して負ける事なく、頼まれた人を、命をかけて守りぬく…本当に憧れるほどにクールで格好良い女性です。
ある時、命を狙われた新ヨゴ皇国の幼い皇子チャグムの用心棒を頼まれ、守りながら隠れて暮していく中で、バルサとチャグムは少しずつ心を通わせ信頼関係を築いていきます。それはチャグムが王宮に戻った後も続き、チャグムに危機が迫ると、バルサはどんな所にいても必ず助けにやって来てくれるスーパー頼りになる用心棒であり続けます。
この全12冊には幼いチャグムが成長して国王になるまでの十数年が描かれ、新ヨゴ皇国内の陰謀や近隣諸国との軋轢、そして巨大な国からの侵略の脅威とそれに対する抗戦、さらに異界の魔物や精霊たちが絡みあいハラハラ・ワクワク・ドキドキが一杯つまっています。
そんな大変な状況の中で、バルサが唯一ほっと出来る場所が、薬草で怪我や病気の治療をしてくれるタンダという男性の所です。そして彼の作るキノコたっぷりの山菜鍋はバルサ最大の癒しです。

このキノコたっぷり山菜鍋のイメージから、私はこの作品を「秋」の本に選んでみました。
上橋菜穂子さんの沢山の作品の中には美味しそうな食べ物が色々出てきます。
そもそも架空の世界の話なので食べ物も架空の物が多いのですが、食べてみたいという読者が多かった為か、その料理本も出版されています!ページをめくると美味しそうなメニューがずらり。もちろん「タンダの山菜鍋」も入っていますので、秋の夜長に守り人シリーズを読みながら「山菜鍋」を食べるのはいかがでしょうか?

[参考文献]
上橋菜穂子・チーム北海道 著
「バルサの食卓」料理本(2009) 新潮社

 

 

Book Talker  Chie***

 

1 八木重吉 作

『秋の瞳』(1925年発表)『貧しき信徒』(1928年発表)ほか

夭折の詩人、八木重吉(1898-1927)の詩は、静かで清らかでありながら、時に、生きていることの喜びが弾けるような、世界を鮮やかに浮き立たせるような力を感じます。やさしい言葉で簡素に、でも丁寧に。

たとえば、『貧しき信徒』の一編、「素朴な琴」。この詩が一番好きというファンが多いのではないでしょうか。

 

素朴な琴

 

この明るさのなかへ

ひとつの素朴な琴をおけば

秋の美しさに耐えかね

琴はしずかに鳴りいだすだろう

 

秋の美しさに耐えかねて鳴り出すのは詩人のこころ、詩心そのものでしょうか。詩人でなくともこころを澄ませて秋の景色に身を浸したときに、ふるえるように、内なる「素朴な琴」が鳴りだす瞬間が、誰にも私にもある気がします。

刊行された二つの詩集『秋の瞳』『貧しき信徒』(後者は重吉没後に刊行)を中心に、重吉の作品はさまざまな本で目にすることができますが、インターネットの電子図書館「青空文庫」もおすすめです。https://www.aozora.gr.jp

青空文庫は著作権の消滅した作品と「自由に読んでもらってかまわない」とされたものをボランティアの力によってテキストを打ち込み、校正、ファイル作成などをして電子図書館にしているものです。

話を重吉に戻しますね。重吉の詩作は5年という短い期間でしたが、今もこうして生きている詩の世界の不思議を感じます。生前に自ら編んだ『秋の瞳』の序はこんなふうに始まります。

私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください。

詩を受け取って、友となる。時空を超えて素敵ですね。季節では「秋」をもっとも好んだといわれる重吉の詩をもう一つだけご紹介します。

 

果物

 

秋になると

果物はなにもかも忘れてしまって

うっとりと実(み)のってゆくらしい

 

2 リチャード・マシスン 著

『ある日どこかで』(2002)創元推理文庫

うっとりと広がる空想に身をゆだねる・・・それは秋の夜長の醍醐味ではないでしょうか。『ある日どこかで』という作品との出会いは、私の場合、映画が始まりでした。映画を観たのは1980年頃ですから、もう40年も前の話です。高校の制服を着たまま入る映画館というドキドキとあいまって、この映画を観たときのうっとり感は今も忘れられません。当時は小品扱いで、同じ映画を観た!という人と共感する幸運に恵まれることなく、一人サントラ盤を探し、美しい音楽にもうっとりしていました。その後、インターネットが普及してこの懐かしい映画を検索して驚きました。いつのまにか希代のロマンチックファンタジー映画として再評価する動きが世界中で広まっていたのです。

肝心の本の話をしなくてはいけません。著者のリチャード・マシスンは『激突!』というあの怖い映画の原作でも有名で、ジャンルに縛られずに作品を世に送り出してきた人物。『ある日どこかで』は、美しい女優の昔のポートレートを見た男性がこころをひかれて時間旅行を試みて女優に会い、やがて・・・というお話。世界幻想文学大賞受賞作ながら、邦訳が出るまでに四半世紀を要したというファンが待ちわびた作といわれています。作品の冒頭は「1971年11月14日」とブログ(日記)風に始まり、主人公の男性が75年の歳月を隔てて恋に落ち、愛を育んだ秋の日々の物語ともいえる作品です。

ちなみに映画の主演は、スーパーマンで有名なクリストファー・リーブ、そしてあまりにも美しいジェーン・シーモア。二人が醸し出す知性と瑞々しさにもうっとりします(あっ!また映画の話に戻ってしまいました・・笑)

 

トーベ・ヤンソン著

『ムーミン谷の十一月』(1980)講談社文庫ほか

ムーミン好きの大人はもちろん、ムーミンの世界の扉をまだ開けたことのない人にもぜひ読んでいただきたいムーミンの小説。この作品は一連のムーミン小説の最後で、寒さや寂しさを感じる秋のムーミン谷(ムーミン一家や仲間たちが住んでいるところ)が舞台です。11月という名前が入っている小説というのも珍しいので選んでみましたが、でもチョイスの本当の理由は、私もこの時期に読み返したくなったから・・。

ムーミンの小説世界なのに、なんと、この本には主人公であるムーミン・トロール(皆さんがご存じのムーミンといわれている子)や、哲学者のようであり冒険家でもあるムーミンパパ、やさしくて皆から信頼されているムーミンママ、ムーミン一家と同居するちょっといじわるな発言の多いミィといった主要人物?が登場しません。

登場するのは彼らにふと会いたくなったり、恋しくなったりしたスナフキンをはじめとする人たち。そういった人たちが集まって過ごすことになるこの作品では、たとえば自由と孤独を愛するスナフキンも、自分の自由や孤独はムーミン一家とあってこそ味わえるものと気づきます。

この作品は、作者のトーベ・ヤンソンが母親をなくしたころに書かれたものといわれています。絆の深いお母さんへの思慕も作品のなかに寄り添っているような気がして、秋に読んでみたくなる作品の一つです。

 

(スタッフN & C)

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