皆さま、いかがお過ごしでしょうか。立春も過ぎ、あとは暖かくなる季節を待つばかりですね。
さて、昨年夏の守富環境工学総合研究所(Meel:ミール)南壁へのアートウォールに続き、昨年末に、通路に面するミール西壁に中島法晃さん、新井真允子さん、Madblast Hiroさんの3人のアーティストがアートウォールを制作してくださいました。
今回は、完成を記念して、3人にお集まりいただき、じっくりとお話をうかがいました。インタビュー時間はとても楽しい時間で、いつの間にか自然にお名前で呼び合いながら進みました。中島法晃さんは、法晃(ほうこう)さん。新井真允子さんは、真允子(まみこ)さん。Madblast Hiroさんは、ヒロさん。というふうに・・・。その雰囲気とアーティストさんそれぞれの思いが伝わりますようにと願いをこめてお届けします。
◎今日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。今回の西壁のアートウォールは寒風吹き荒ぶ昨年12月の取り組みで、寒すぎて絵筆を動かせなかった日があったほどと聞いています。まずはご感想を聞かせてください。
ヒロさん/制作のスタートは寒さが本格的になった12月6日で、ちょうど問屋町商店街のせんい祭りの開催日。それから土曜日曜の5日間を使って、12月26日に完成しました。途中1日は風が強くて寒くて仕事にならず2時間ほどで引き上げました。寒さをちょっとなめてましたね(笑)。
法晃さん/とにかく寒かったです(笑)。
真允子さん/本当に寒かった!でも、コロナのせいで制作の場が減っていて、3人で集まって何かをするというのも久しぶりで楽しかったです。
ヒロさん/そうですね!3人で、現場で「どうする?」「どうしよう?」とディスカッションしながら進めていくのはやっぱり楽しかったです。ちなみに3人での活動は2016年7月に1か月間、柳ヶ瀬で3人展をして以来、今回で7回目です。
◎これまで何度も活動されているユニットなのですね!今回のように3人で一つの同じ壁に取り組むというのは大変なのでは?
法晃さん/そうですねえ。ヒロくんが夏に描いた南壁のカメが強烈で(笑)。だからその続きで、西壁もヒロくん一人でやればいいじゃん!って言ったんですよ。でもヒロくんがどうしても一緒にやりたいと。
ヒロさん/アハハ。僕が南壁をやっているときに、お二人には見に来てもらいまして、西壁のお話を守富先生からいただいた時、今度はぜひ3人でやりたいと強く思ったんです。3人で制作すると感覚が新鮮。自分では描けない作品が生まれる。3人で描くということの楽しさがあるんですよ。
ということで、今回は南壁からつながる構図、グラデーションを考えて。コウノトリが通路側へと入っていくようなイメージを頭に描いていました。進め方としてはスペースを3人で分けてやっていこうと考えましたが、実際は現場でのアドリブ。その都度話し合って決めていった感じです。
◎ヒロさん以外のお二人は、問屋町に来てみて印象はいかがでしたか?
真允子さん/初めて来たときは人がいない、暗いという印象でした。
法晃さん/そうそう。シャッター街の印象で寂しい、暗い感じがしました。
ヒロさん/ミール西壁も通路に面していて暗かったけれど、でも今回のアートでかなり明るくなりましたよね。
真允子さん/ホント!こうやってカラフルなアートが完成すると、久しぶりに3人で取り組んで楽しかった分、終わっちゃったことで、私が寂しくなりました(笑)。
◎そんなことをおっしゃらず(笑)、また問屋町で描いてください!では真允子さんから、作品の着眼点やモチーフについて教えていただけますか?
真允子さん/はい。私は、「猫を描いて」といわれまして。もともと動物をモチーフに描くことが多く、なかでも私自身も猫が大好き!壁画に描くなら実物大のほうが面白いと考えました。リアルサイズで描くことで、自分自身が描いたのにハッとしたりして(笑)。たとえばエアコン室外機の上の猫とか!
◎わかります!猫ちゃんを見つけてハッとしたあと、でもなぜか気持ちがほっこりします(笑)。また会いたくなるといいますか。他にもいるのかな〜?とか。
真允子さん/わぁ、嬉しい。ありがとうございます!猫好きは猫を見るとリラックスするみたいですね。今回はリアルなサイズにしたのですが、でも猫のリアルな毛色で描くと印象が暗くなるのかなと考え、壁のなかにある色、壁画に溶け込む色合いを使って、壁画のなかの世界観に馴染む猫を7匹描きました。
◎7匹みんな数えるのが楽しみ!全体の色合いについても興味深いです。
ヒロさん/はい、今回の色合いは全体的にカラフルにしました。それぞれラフを持ち寄って集まり、スタート当日にどうしていこうかと話し合って。ちなみに僕は守富先生から「鳥を描いてほしいな〜」とリクエストいただいていたので、前にもお話したようにコウノトリを描きました。幸せを運ぶコウノトリがいいかなと。
◎岐阜なのに鵜飼の「鵜」ではないんですね(笑)。海なし県の岐阜なのに、南壁に「ウミガメ」をど〜んと描かれたように。そこがやっぱりヒロさんですね!
ヒロさん/そうですね(笑)。当たり前を描いてもつまらないかなと思うので。今回のコウノトリは主張しすぎない感じで、親子のイメージも含ませて、3羽描きました。
◎なるほど‥‥。では、法晃さんの絵にはどんな思いがあるのでしょう。
法晃さん/「縄」というモチーフに最近着目していることもあり、縄を描きました。同じ問屋町商店街にある守富先生の第二事務所にうかがったとき、真っ黒な炭素繊維にヨリをかけて編んでいる様子を見せてもらいました。環境問題について長い先、未来を見据えて取り組んでいらっしゃるんだなぁと。その時に、自分がモチーフにしている縄と共通のものがあるなぁと感じたんです。
ちなみに研究室ではかなりアナログなことをしていて大変そうでした。でもこの一歩で、この作業の一つひとつで環境を変えていくのかな、とも思いましたね。
◎「縄」というモチーフ。そこにはどんな思いがこもっているのですか。
法晃さん/繊維をより合わせてつくられているのが縄ですが、そのままにしておけば解(ほど)けてしまいますよね。よった縄が勝手に開き解けてしまうことを止めるには、先を結ぶことが必要です。よった先、編んだ先を結んで留めるわけです。
コロナが始まって以来、いろんなものが変わり、生活も変わりました。でもどうにか、何かで、何かの知恵や工夫で収束させたい、どこかで結ぶ、どこかで止めたいという思いが僕にはあります。つまり、変わっていくものに抗(あらが)いたい、という僕の思いの例えとして縄がある訳なんです。
◎それは深い話ですね。
法晃さん/守富研究所の西壁の絵の中に、縄があって、それを見た人が「なんで縄?」「どうして縄があるの?」と疑問に思うことが、この研究所を知る一歩につながればと思うんです。縄って何だろう?この壁の絵は?と見る度、来る度に、その人なりに気になり、わかっていったり、興味を持つきっかけになったりしたら、とてもうれしいと思っています。
そもそも僕は絵が苦手で(いえいえ〜と真允子さんとヒロさんの声)。僕は、フィールドワークとして、人類学的に人との関わりのなかで何が生まれるか?ということに興味があるんですよ。どう人と関わるか。なぜこれが生まれたのか。それを問い、考えていくプロセスが楽しいですね。
(ヒロさん、真允子さんも『へぇ〜』と感心のご様子・・・)
続きは[後編]で!
写真は右から、アーティストの法晃さん、真允子さん、ヒロさん、そして守富所長
(スタッフC)
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